物盗られ妄想と嫉妬妄想
(第1回)

 認知症でよくみられる妄想に「物盗られ妄想」と「嫉妬妄想」があります。物盗られ妄想とは、物やお金が盗られていないのに、「盗られた」と思い込む妄想で、嫉妬妄想は、配偶者が「浮気をしている」つまり配偶者を他人に「盗られた」と思い込む妄想です。認知症になると自分が今やったことも忘れてしまい、自分がどこにいて、周囲とどんな関係かもあやふやになってきます。そのため認知症の人は非常に不安が強くなります。人間不安が強くなると頼れるものを近くに置いておきたくなるものです。その頼れるものがなくなると生きていけない気がして「盗られた」らどうしようとまた不安になります。私はその不安の延長線上に妄想があると思っています。お金がないと生きていけないと思うと「物盗られ妄想」になり、配偶者がいないと生きていけないと思うと「嫉妬妄想」につながります。私の経験では、物盗られ妄想は、圧倒的に女性に多く、嫉妬妄想は男性に多いようです。つまり、女性は夫がいなくても金さえあれば生きていけると思っていているのに対して男性は、奥さんなしには生きていけないと思っているということになります。なんだが男性は哀れだとおもいませんか。次回はこの嫉妬妄想についてさらに詳しくお話したいと思います。

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My First Seat 〜私の特等席〜 2006.4掲載