男運が悪いと言うけれど
第3回

男運が悪いと言うけれど、これは「運」ではないことがあるようです。 私がまだ研修医をしていた頃の話です。 30代前半の女性が「気分が落ち込む」「悲しくなって急に涙が出てくる」「不安でいてもたってもいられなくなる」「自分は生きていて何か意味があるのかわからない」など訴えて私の外来を受診しました。 本人はなぜそんな気分になるのかわからないといわれていましたが、話を詳しく聞いてみると気分が落ち込むようになったことと、ご主人さんの状態が関係ありそうなことがわかってきました。 彼女の家はご主人と二人の子供の4人家族で、野菜農家を営んでいるのですが、結婚当初からご主人は、酒びたりでほとんど仕事をせず、彼女は、農家の仕事、家事、育児その他もろもろ全て一人でこなしておられました。 きっかけははっきりしませんが、その夫が、突然酒をやめて、仕事をまじめにするようになったのです。傍目からは大変良いことですが、彼女はその頃から気分が不安定になってきたようです。 彼女は駄目な夫を支えることが彼女にとっては生きがいで、それが生きていることの証でもあったのです。 夫が駄目でなくなると同時に、張り詰めていたこころにぽっかりと穴が開いてしまって「自分はいらない存在ではないか」「夫に捨てられるかもしれない」と不安になってきたようです。彼女にとっては「駄目な夫」が必要だったのです。 その後、共依存という言葉が一般的になりましたが、その典型といえるでしょう。 一方的に世話やかれる立場と一方的に世話を焼く立場で固定している関係です。 これは、健全な関係ではありません。 しかし、お互いが惹かれあうのです。 それにしても世の中に共依存的なカップルの多いこと…皆さんはいかがですか?

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My First Seat 〜私の特等席〜 2007.4掲載